オレオサイエンス
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特集総説
高分子ミセルの抗がん剤とタンパク質への応用
加藤 泰己
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2010 年 10 巻 1 号 p. 19-24

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抄録
シスプラチンは肺がん, 胃がん, 膀胱がんの標準治療薬である。しかしながら, 腎毒性や神経毒性のような副作用のため治療を中断することがある。ドラッグデリバリーシステムにより副作用を抑制し, 腫瘍内のシスプラチン量を増加させることは価値あるアプローチといえる。NC-6004は片岡らにより新規なシスプラチンのデリバリーシステムとして考案された。活性を保持したままシスプラチンでみられる腎毒性と神経毒性を抑制したものである。NC-6004の臨床第1相試験は進行癌患者を対象に英国で実施された。
片岡らが発明したドキソルビシン結合体と同様にエピルビシンをpH応答性ミセルとした。動物モデルにおいてpH応答性エピルビシンミセルの抗腫瘍活性はエピルビシン水溶液より優れていた。
インターフェロン, インターロイキン, 穎粒球コロニー刺激因子 (G-CSF), 成長因子のような多くのタンパク質は治療効果を示すためには血中において安定であることが必要である。ブロック共重合体を修飾する技術によりタンパク質ミセルシステムを確立した。G-CSFミセルはPEG修飾G-CSFと同等の血中における徐放性を示した。タンパク質ミセル技術はバイオシミラー医薬品や血中半減期の短いタンパク質に適していると思われる。
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© 2010 公益社団法人 日本油化学会
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