オレオサイエンス
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特集総説論文
脂肪酸, コレステロール, DHAなど脂質の臓器や細胞での取り込みと排泄機構に関する最新情報
日比野 英彦
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2011 年 11 巻 10 号 p. 373-379

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抄録
細胞への脂質の取り込みや排出に関する新しいシステムが生体異物排出機構の解明の過程で見出された。この新しい脂質輸送機構は, 生体異物排出ポンプである多剤耐性遺伝子産物であるABC (ATP結合カセット) 輸送タンパク質であることが遺伝子解析によって判明した。ABC輸送タンパク質はリン脂質やコレステロールなど多様な脂質の細胞への取り込みと排出を行っている。この発見により新生児呼吸窮迫症候群のリン脂質輸送や植物ステロール排出機構がより詳細に理解されてきた。母胎から胎児に供給されるDHAは胎盤と脂肪酸結合タンパク質 (FABP) によってその他の脂肪酸より優先的に輸送される。母胎から胎児へのDHAの脳の取り込みは脳型のFABPに制御され, そのタンパク質 (FABP7) をコードしている遺伝子は脳の発生を制御する転写因子 (Pax6) の標的となっている。成人脳において, 脂質取り込みの主要な役割を果たすLDL受容体が脳血液関門 (BBB) の血管側で確認されず, 現在脳への脂質の取り込み機構はまだ未解明である。
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© 2011 公益社団法人 日本油化学会
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