オレオサイエンス
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特集総説論文
遺伝子多型に基づく脂質代謝の人種差
香川 靖雄
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2011 年 11 巻 10 号 p. 381-389

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抄録
脂質代謝の人種差の主な原因は一塩基多型 (SNP) の頻度差による。食生活のグローバル化に伴ってモンゴロイドに肥満や2型糖尿病が激増した一因がSNP頻度差である。脂質代謝には主要な脂肪酸が糖質に変換できないという制約があるので脂質エネルギー比率が重要な食事因子となる。さらにn-3系とn-6系の脂肪酸はそれぞれ独立にαリノレン酸とリノール酸からのみ形成されるという制約があるのでn-3/n-6比率が次の重要な食事因子となる。SNPの連鎖不平衡にもとつく全ゲノム関連解析 (GWAS) を用いたHapMap計画によって, ネグロイド, モンゴロイド, コーカソイドの問で異なる人種差の祖先識別マーカーが明らかになった。脂質エネルギー比率の増加は飢餓耐性遺伝子 (βAR, UCP, PPAR等) 多型頻度の多いモンゴロイドで脂質代謝異常/糖尿病を誘発した。n-3/n-6比率の低下は脂肪酸不飽和化酵素遺伝子 (FADS) や脂質由来生理活性物質 (PG, LT, TX, レゾルビン, プロテクチン等) の形成酵素遺伝子の多型を通して循環器疾患等の人種差の原因となっている。
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© 2011 公益社団法人 日本油化学会
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