オレオサイエンス
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特集総説論文
微生物付着・バイオフィルムの制御と応用から界面微生物工学へ
堀 克敏
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2012 年 12 巻 11 号 p. 567-572

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抄録
微生物は生物/非生物表面を問わず表面上にバイオフィルムを形成する傾向がある。それは,最初の付着過程とその後のバイオフィルム発達過程の二つのフェーズからなる複雑な過程である。多くのバクテリアは細胞表層に,鞭毛や線毛といった直径数ナノメートルから数十ナノメートルの繊維状構造物を有する。これらバクテリオナノファイバーは接着因子としての機能を有することが示されてきた。我々は微生物付着とバイオフィルム形成のメカニズムを調べ,またそれらのバイオプロセスへの応用について検討してきた。本稿では,最近の我々の研究成果と研究の将来展望を簡潔にまとめた。バイオフィルムの廃水処理への応用では,三つの成功例を紹介する。それらは,“ボトムアップ型バイオフィルム” という新しい概念に基づく油分解機能を有する機能性バイオフィルムの構築,膜バイオリアクターにおけるバイオファウリングの生物防除,炭素繊維の驚異的な汚泥・微生物付着能力の機構解明である。バクテリオナノファイバーのトピックについては,高付着性細菌Acinetobacter sp. Tol 5 から発見したAtaAと名付けた新規接着繊維について,構造と機能を紹介する。これは微生物細胞の直接固定化に利用可能である。固定化微生物を使った化学物質の生産例も示す。
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© 2012 公益社団法人 日本油化学会
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