抄録
柔軟仕上げ剤は粗硬になった繊維製品に適用して,なめらかさと柔軟性を回復する目的で使用される。界面活性剤型柔軟仕上げ剤の主成分としては,長鎖ジアルキルカチオン界面活性剤(ジオクタデシルジメチルアンンモニウムクロリド;DODAC)が多く用いられている。DODACの柔軟性発現について,電子顕微鏡にて形態観察を行ったところ,ベシクルと呼ばれる小胞体が水中に分散しており,これが繊維表面に吸着することがわかった。従前はDODACが単分子層で繊維表面に吸着して機能を発現する説が有力だったが,本稿ではこの説の矛盾点を指摘し,走査型プローブ顕微鏡観察等の結果から,繊維表面に吸着したDODACのベシクルは乾燥によって潰れ,円盤状薄膜を形成しこれが柔軟機能を発現するモデルを新たに提案した。