オレオサイエンス
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13 巻, 11 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
特集総説論文
  • 五十嵐 崇子, 中村 浩一
    2013 年13 巻11 号 p. 521-526
    発行日: 2013年
    公開日: 2016/02/01
    ジャーナル フリー
    衣料用柔軟剤が木綿布を柔らかくするメカニズムについては,製糸工程における知見からの演繹的推論により 「繊維間の摩擦低減」 とする説が,一般的に知られている。具体的には,繊維表面上で柔軟剤がアルキル基を空気側に向けて単分子膜を形成する事により,近接した繊維間の摩擦を低減させるので,柔らかさを発現するという説である。これに対し,我々は,木綿布・糸を濡れた状態から静置乾燥すると,まるで糊付けしたかの様な硬さを発現する現象に着眼し,この硬さの原因を精査する事で,柔軟剤の効果発現メカニズムを探った。濡れた状態から自然乾燥した木綿糸の曲げ硬さ(KES-FB2法)の変化と,絶乾調整した後の木綿糸の柔らかさの変化等から,この硬さを支配する主要因を木綿繊維間に存在する結合水による架橋性の水素結合によるものと推察した。この結果を踏まえて,柔軟剤の効果を考えてみると,柔らかさの主たる発現メカニズムは,「木綿間の結合水を介した水素結合ネットワークの形成阻害」 と推察できる。
  • 中村 和吉
    2013 年13 巻11 号 p. 527-532
    発行日: 2013年
    公開日: 2016/02/01
    ジャーナル フリー
    柔軟仕上げ剤は粗硬になった繊維製品に適用して,なめらかさと柔軟性を回復する目的で使用される。界面活性剤型柔軟仕上げ剤の主成分としては,長鎖ジアルキルカチオン界面活性剤(ジオクタデシルジメチルアンンモニウムクロリド;DODAC)が多く用いられている。DODACの柔軟性発現について,電子顕微鏡にて形態観察を行ったところ,ベシクルと呼ばれる小胞体が水中に分散しており,これが繊維表面に吸着することがわかった。従前はDODACが単分子層で繊維表面に吸着して機能を発現する説が有力だったが,本稿ではこの説の矛盾点を指摘し,走査型プローブ顕微鏡観察等の結果から,繊維表面に吸着したDODACのベシクルは乾燥によって潰れ,円盤状薄膜を形成しこれが柔軟機能を発現するモデルを新たに提案した。
  • 小倉 英史
    2013 年13 巻11 号 p. 533-538
    発行日: 2013年
    公開日: 2016/02/01
    ジャーナル フリー
    近年,柔軟仕上げ剤市場は拡大傾向にある。従来,柔らかさ等の風合いが重視されてきたが,次々と 「香り」 を訴求した柔軟仕上げ剤が市場へ導入されている。香りも,単に良い香りがするだけでなく,その香りが強く,長く持続することも求められるようになってきた。また,柔軟仕上げ剤の香りは,機能性向上,心理的作用へも寄与する。本稿では,柔軟仕上げ剤の 「香り」 にフォーカスし,良い香りを持続するための技術開発,および香りの効果・効能に関する研究について解説する。
総説
  • 日比野 英彦
    2013 年13 巻11 号 p. 539-547
    発行日: 2013年
    公開日: 2016/02/01
    ジャーナル フリー
    リン脂質(PL)は細胞やオルガネラの膜形成やシグナル伝達分子の機能を果たす重要な成分である。細胞間と細胞内のPL由来シグナル伝達分子は,PL分子種自身,ホスホリパーゼA(PLA1,2),ホスホリパーゼC(PLC),ホスホリパーゼD(PLD)による分解産物とそれらの代謝産物である。PL,特に特定のホスファチジルコリン(PC)分子種は核受容体に認識される。このPC分子種は転写因子を活性化し標的遺伝子を発現させ,脂質代謝を促進する。PLのPLA1,2による加水分解はリゾPL(LPL)と当モルの脂肪酸またはアラキドン酸(AA),エイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)などを含む高度不飽和脂肪酸(PUFA)を産生する。LPLにはリゾPC(LPC)や免疫関連作用を示すリゾホスファチジルセリンなどが含まれ,PUFAからは,AAのカスケード領域が華々しく創生され,EPAはエイコサノイドとDHAはドコサノイドへの進展が観られる。PLのPLCによる加水分解はホスファチジルイノシトールが主な対象であり,プロテインキナーゼCを活性化するジアシルグリセロールと滑面小胞体からカルシウムイオンを放出させるイノシトール1,4,5-三リン酸を産生する。PLDによりPLの作用に関し,ホスホジエステラーゼ(PDE)機能による加水分解はたん白質を活性化するホスファチジン酸(PA)とコリン(Cho),セリン,エタノールアミンなどの塩基を産生する一方,塩基交換機能では中枢領域においてPCやホスファチジルエタノールアミンがホスファチジルセリン(PS)に転換され,そのPSが神経細胞膜のシグナル伝達に関与している。LPCをリゾPAとChoに加水分解する分泌型リゾPLDが細胞運動性刺激因子オータキシンであると同定された。新たに発見されたCho含有PL特異的PDEはLPCとグリセロホスホコリン(GPC)をホスホChoに分解してCho代謝を制御することが見出された。GPCはCho補給源として母乳に豊富に存在し,精液,睾丸,腎臓に存在が認められ,成長ホルモン分泌促進,肝機能障害改善などが知られ,腎臓や精巣での浸透圧調整作用との関係が深い。
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