2013 年 13 巻 3 号 p. 111-116
幾何学的な拘束により物性が設計・制御される超分子構造体は近年大きな注目を集めており,複数の環状分子が線状高分子に包接されたネックレス状構造を持つポリロタキサン(PR)は,そのような物質の代表例である。我々のグループでは,PRの環状分子同士を架橋することにより,可動な架橋点を有する環動ゲルを合成した。環動ゲルは,架橋点の可動性のため従来のゲルにはない特異な力学特性を示す。 最近では,可動架橋点の概念は溶媒を含まないエラストマーにも適用されており,そのような物質を総称して環動高分子材料(SRM)と呼ぶ。SRMは塗料や防振材など,様々な分野への実用化が始まっているが,これらが用いられる環境はいずれも固体状態である。したがって,SRMやその原料であるPRの固体状態における構造や物性に関する知見の蓄積が,今後のさらなる応用展開に向けて非常に重要である。本稿では,PRおよびその誘導体の固体状態における構造と力学物性を,広角X 線散乱および粘弾性測定により調べた結果について報告する。また,最近のSRMの応用展開についてもいくつか紹介する。