オレオサイエンス
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総説
表面形成における非平衡系の自己組織化の制御
朝倉 浩一
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2013 年 13 巻 4 号 p. 171-177

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抄録

生命体のように,系が外部環境に対して開かれ平衡から遠く離れた状態に保たれた場合,ゆらぎが成長し散逸構造と呼ばれる様々な自己組織化された状態が発生する。粘性の高い液体を固体基板上に塗工すると,通常は平滑な表面とはならず,塗工方向と平行に空間周期ストライプパターンが発生する。これは,液膜が形成される過程が平衡から遠く離れた状態となり,したがって気液界面の形状ゆらぎが成長するためである。界面形状ゆらぎが成長する現象はフィンガリングと呼ばれ,表面形成を伴う工業生産プロセスにおいて普遍的に観察される。我々は,フィンガリングの発生を抑制する技術を開発し,サンスクリーン剤性能のin vitro評価法の確立や,自動車車体の回転霧化塗装における技術革新に寄与してきた。また,自発的に空間パターンが発生してしまう現象を逆手に取って,これを高撥水性表面の作製に応用する技術を開発してきた。

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© 2013 公益社団法人 日本油化学会
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