オレオサイエンス
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14 巻, 1 号
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特集総説論文
  • 福岡 隆夫, 森 康維
    2014 年 14 巻 1 号 p. 5-10
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル フリー

    金ナノ粒子(AuNPs)の自己集合体は表面増強ラマン散乱(SERS)のような局在プラズモン共鳴(LPR)に関係する機能性ナノ構造として興味を集めている。金ナノ粒子コロイドが凝集するとSERS活性を持った異方性凝集体が生じるが,このような凝集は不安定であり,凝集体モルフォロジーに対応するLPRの機能も失われてしまう問題があった。我々は電荷を持つ板状ナノ粒子を共存させて凝集の進行を停止させることで,AuNPs自己集合の安定化と制御を行うことに成功した。拡散律速凝集の初期にはフラクタル次元1.4の凝集体が生成し,このときLPR波長は785 nmに出現し785 nm励起のSERSに良く利用できることがわかった。凝集が進行した複雑な凝集体ではフラクタル次元も大きくなった。あらかじめ凝集させたAuNPsは界面活性剤や親水性ポリマーがなくてもSERS活性を一ヶ月以上維持し,試料4,4’-bipyridine水溶液を混合させると濃度50 nMでも速やかに検出できた。この自己集合体を生体関連物質のラベルフリー分析に応用した。

  • 米澤 徹
    2014 年 14 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル フリー

    金ナノ粒子は,その興味深い赤色から古くから着色顔料として用いられてきている。古い教会のステンドグラスはガラスの中で金がナノ粒子として存在しているもので,透明性が高く鮮やかな赤色を示している。金ナノ粒子の化学的研究の歴史も古く1857年に文献にあるFaradayの金コロイドの合成から始まる1,2)。金それ自体は古くから価値のあるものとして用いられてきており,バルクでは鮮やかな黄金色であるが,その色とコロイドにした時の色は全く異なっていた。そうした直接目に見える興味深い現象から始まって,金ナノ粒子は常に人々の興味の中心となってきた。特に,化学還元法で容易に得られることも研究がこれだけ進んだことの理由でもあろう。さらに,Brustらによるシングルナノレベルの金ナノ粒子の合成がNaBH4による還元によって可能となってきてから爆発的な量の研究が報告されるとともに,一段と金ナノ粒子研究のステージは上がった3)。最近の制御された金クラスターや新しい触媒など,金は人々の興味を掻き立てるのをやめない。この総説ではそうした金をベースとしたナノ粒子研究を俯瞰し,人々がひきつけられていく原因を探ってみたい。

  • 新留 琢郎
    2014 年 14 巻 1 号 p. 17-21
    発行日: 2014年
    公開日: 2017/02/01
    ジャーナル フリー

    金ナノロッドは近赤外域に吸収バンドをもち,吸収した光エネルギーは熱へ変換される。したがって,近赤外光により発生する熱を使って,薬物の放出をコントロールするドラッグデリバリーシステムが構築できる。まず,我々は二本鎖DNAで金ナノロッドを修飾した。すなわち,この金ナノロッドに近赤外光を照射すれば,フォトサーマル効果で金ナノロッドは発熱し,その熱で一本鎖DNAが遊離するというシステムである。また,加熱されることにより進行する逆Diels-Alder反応をつかったPEG鎖のコントロールドリリースシステムも構築した。一方で,フォトサーマル効果により亢進されるタンパク質の経皮デリバリーシステムも構築した。実際に,皮膚に発熱素子となる金ナノロッドを塗布し,オボアルブミン水溶液をのせ,近赤外光を照射した結果,皮膚の温度は上昇し,皮内へのオボアルブミンの透過が認められた。このように,近赤外光でコントロールされるドラッグデリバリーシステムは,さらに他の機能も組み合わせ,機能的なデリバリーシステムへと発展すると期待される。

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