2014 年 14 巻 12 号 p. 523-530
ビタミンAは約200年前に発見されてから,様々な役割を果たす重要な栄養素として認められてきた。現在,活性型ビタミンAであるレチノイン酸は前骨髄性白血病患者に対し分化誘導療法薬(抗がん剤)として使用されているが,他のがんや疾病に対する応用も期待される。近年,レチノイン酸以外のレチノールを含むレチノイドに抗がん作用があることが示され注目が集まっている。そこで本稿では,ビタミンAの供給,及び,生体内でのビタミンAの動態,代謝,作用についての新しい知見を,1)β-カロテンの作用と供給源としてのレッドパーム油,2)レチノイン酸の腸内免疫賦活作用,3)ビタミンAに関連する新技術[レチノイン酸の可視化,レチノイン酸結合タンパク質の分解促進法,レチノイン酸のLC/MS/MSによる新規定量法],4)ビタミンAに関連する新素材[新規レチノイン酸誘導体由来化合物の抗酸化作用と抗がん作用(Non-genomic action)],の内容で紹介する。ビタミンAの補助食品としての活用法の構築や予防薬・治療薬の開発を行い,健常人や患者のQOLの向上に寄与できる研究を目指す。