オレオサイエンス
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特集総説論文
細胞内環境応答性脂質様サーファクタントを基盤とした遺伝子・核酸ナノDDS
秋田 英万
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2015 年 15 巻 3 号 p. 115-122

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抄録

遺伝子やsiRNAを用いた次世代医薬を実現するためには,これら分子の細胞内動態を制御するための技術が必要となる。本総説では最初に,我々がこれまでに実施した,ウイルスと人工遺伝子ベクター(リポプレックス)間の細胞内動態比較の結果について概説する。本解析により,核送達後の転写や翻訳過程が人工ベクターの遺伝子発現を制限する律速段階であることが明らかとなった。また,これら律速過程を生み出すメカニズムについてより詳細に解析した結果,細胞内に導入されたカチオン性成分が,導入遺伝子やmRNAと静電的に相互作用することが主要因であることも見出している。この細胞内動態解析結果に基づき,近年我々は,エンドソーム内の低pH環境で正に帯電し,また,細胞質内の還元環境下で分解される脂質様材料 (SS-cleavable and pH-activated lipid-like materials; ssPalm) を基盤材料としたナノ粒子開発を進めている。また,脂溶性足場構造に関して,ミリスチン酸 (ssPalmM),レチノール酸 (ssPalmA) and α-トコフェロール (ssPalmE) を採用した分子のラインアップを揃えている。本稿では,これらの材料から形成されるナノ粒子を用いた遺伝子,核酸デリバリー研究について概説する。

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© 2015 公益社団法人 日本油化学会
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