2015 年 15 巻 7 号 p. 289-296
水溶液表面における陽イオン界面活性剤の対イオン分布と油溶性アルコールのヘキサン/水界面吸着膜の構造をシンクロトロンX線解析により調べた。その結果,界面が不均一な構造を持つ場合があることが明らかになった。まず全反射X線吸収微細構造 (XAFS) 法により,臭化ドデシルトリメチルアンモニウム (DTAB),臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム (HTAB),臭化デシルメチルイミダゾリウム (DeMIMBr) の吸着膜中での臭化物イオンの水和状況を検討した結果,水溶液中と同様に6水和した状態と部分的に脱水和して活性剤頭部とイオン対を形成したような状態があることが明らかになった。またこの二つの状態の比の活性剤の界面密度への依存性も明らかにした。次いで1H,1H,2H,2H-perfluorodecanol (FC10OH)と1H,1H,10H,10H-perfluorodecane-1,10-diol(FC10diol)のヘキサン/水界面吸着膜のX線反射率測定の研究からは,FC10OHの凝縮単分子膜は2次元固体の状況に近く,膨張膜は均一ではなく凝縮単分子膜のドメインが点在する不均一な状況にあること,FC10diolでは両端の二つのOH基によって界面に水平に凝縮吸着した状態から多重膜への転移が起こること,などが分かった。さらにFC10OHとFC10diolの混合吸着膜の構造も明らかになった。