2016 年 16 巻 2 号 p. 51-56
各種の両親媒性物質がコロイドの分散性に影響を与えることはよく知られており,粒子の凝集を引き起こす増感剤になったり,分散状態を安定化させる分散剤になったりする。一概に両親媒性物質といっても,低分子の界面活性剤から高分子のタンパク質や多糖類など多種多様であり,コロイドの分散性に対する効果は個々の状況に則して考える必要がある。本稿では固体微粒子が液相中に分散したサスペンション(特に負に帯電したポリスチレンラテックス)の分散安定性に対する低分子のイオン性界面活性剤添加の効果と,乳化能を有するタンパク質(ウシ血清アルブミン,β-ラクトグロブリン,β-カゼイン)によって安定化されたO/Wエマルションの分散性に焦点を当て,各々の両親媒性物質が表面に吸着することによって粒子の分散状態に与える影響を解説する。