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特集総説論文
皮膚角層細胞間脂質の構造解析と製剤開発への応用
小幡 誉子髙山 幸三
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2016 年 16 巻 6 号 p. 279-284

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抄録

皮膚の最外層にある角層は,生体を脱水や異物侵入から保護する機能をもっているが,この物理的な生体保護機能は,細胞間脂質が形成する「ラメラ構造」がその中心を担っている。細胞間脂質のラメラ構造は,レンガ-モルタル構造として模式化され,レンガに相当する角層細胞の層間をモルタルに相当する細胞間脂質が二重構造を形成して埋めている。ラメラ構造には,約13 nmの長周期ラメラと約6 nmの短周期ラメラがあり,充填構造には六方晶と斜方晶がある。これらは,放射光X線回折で観察でき,温度上昇に伴って,斜方晶の液晶化や高温型六方晶の形成などいくつかの相転移がある。医薬品のみならず,食品や日用品にも利用されているl-メントールのような薬物の皮膚透過を改善する化合物を適用すると,充填構造の液晶化が認められ,皮膚透過改善の作用機構を明確にすることもできた。経皮吸収型製剤や外用剤の成分と細胞間脂質の構造変化を分子レベルで捉えることは製剤開発にとって重要な基盤情報である。

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© 2016 公益社団法人 日本油化学会
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