オレオサイエンス
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16 巻, 6 号
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特集総説論文
  • 浅井 知浩, 出羽 毅久, 奥 直人
    2016 年16 巻6 号 p. 271-278
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/02/01
    ジャーナル フリー

    小分子RNA(small interfering RNA(siRNA)やmicroRNA(miRNA))を用いたRNA干渉療法は,疾患関連遺伝子の発現を選択的に抑制する治療法であり,がんなどの遺伝子発現異常に基づく疾患への応用が期待されている。しかし,RNAは生体内で分解され易く,細胞膜をほとんど透過しないため,医薬品化にはdrug delivery system(DDS)技術が必要である。核酸医薬開発においてDDS技術の重要性が一段と増す中,脂質ナノ粒子を用いたsiRNAデリバリーシステムは実用化に向けた研究がかなり進んでいる。本稿では,イントロダクションとしてRNA干渉療法の基礎とsiRNA医薬の特徴について記した後,脂質ナノ粒子を用いたsiRNAデリバリーシステムについて概説する。その後,我々が開発を進めている脂質ナノ粒子を用いたsiRNAデリバリーの研究成果を要約して紹介する。これまでに我々は,siRNAデリバリーのために複数のポリカチオン脂質誘導体を設計・合成し,様々な脂質ナノ粒子を調製した。そして,遺伝子のノックダウン効率を指標にしたスクリーニングを行い,脂質ナノ粒子の処方を決定した。さらに我々は,腫瘍へのターゲティングを目的として,ポリエチレングリコールで被覆した脂質ナノ粒子の表面をペプチドで修飾した全身投与型siRNAベクターを開発した。この全身投与型siRNAベクターを用いてがんの増殖に関与するmammalian target of rapamycin(mTOR)に対するsiRNAを担がんマウスに静脈内投与したところ,siRNAが選択的に腫瘍に集積し,有意ながん治療効果をもたらした。このことから,我々が開発した脂質ナノ粒子は,全身投与による腫瘍選択的siRNAデリバリーに応用可能であることが示唆された。

  • 小幡 誉子, 髙山 幸三
    2016 年16 巻6 号 p. 279-284
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/02/01
    ジャーナル フリー

    皮膚の最外層にある角層は,生体を脱水や異物侵入から保護する機能をもっているが,この物理的な生体保護機能は,細胞間脂質が形成する「ラメラ構造」がその中心を担っている。細胞間脂質のラメラ構造は,レンガ-モルタル構造として模式化され,レンガに相当する角層細胞の層間をモルタルに相当する細胞間脂質が二重構造を形成して埋めている。ラメラ構造には,約13 nmの長周期ラメラと約6 nmの短周期ラメラがあり,充填構造には六方晶と斜方晶がある。これらは,放射光X線回折で観察でき,温度上昇に伴って,斜方晶の液晶化や高温型六方晶の形成などいくつかの相転移がある。医薬品のみならず,食品や日用品にも利用されているl-メントールのような薬物の皮膚透過を改善する化合物を適用すると,充填構造の液晶化が認められ,皮膚透過改善の作用機構を明確にすることもできた。経皮吸収型製剤や外用剤の成分と細胞間脂質の構造変化を分子レベルで捉えることは製剤開発にとって重要な基盤情報である。

  • 丸山 一雄
    2016 年16 巻6 号 p. 285-291
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/02/01
    ジャーナル フリー

    診断(Diagnostics)と治療(Therapeutics)を融合した“セラノスティクス(Theranostics)”は,この言葉通り治療と診断を同時に行うシステムである。診断用装置の中で超音波造影装置は,小型でベッドサイドにも運搬可能,非侵襲的,比較的安価,リアルタイムイメージングが可能などの多くの利点を有し,セラノスティクスを構築する上で有望なエネルギーとして捉えられる。我々は,超音波セラノスティクスの構築を目的に,リポソーム技術を駆使した新たなバブルリポソームを開発した。このバブルリポソームに超音波を照射すると,超音波の周波数や強度に応じてバブルリポソームが振動したり圧壊したりと様々な振る舞いをし,超音波造影だけでなく,薬物や遺伝子を細胞に導入することが可能である。また,腫瘍新生血管の開口による薬物送達や血栓溶解も可能である。本稿では,バブルリポソームと超音波による超音波セラノスティクスを紹介する。

  • 岡本 浩一
    2016 年16 巻6 号 p. 293-301
    発行日: 2016年
    公開日: 2019/02/01
    ジャーナル フリー

    正常マウスにマウス大腸癌細胞CT26を尾静注することで,肺転移癌モデルを作成した。マンニトールを賦形剤,キトサンをベクターとしたマウスインターフェロンβ遺伝子吸入粉末剤を超臨界二酸化炭素晶析法で調製し,肺転移癌モデルの気管内に投与したところ,有意な癌増殖抑制が認められた。次に,ホタルルシフェラーゼをコードしたpCAG-Lucをレポーター遺伝子とし,ベクターにPAsp(DET)もしくはPEG-PAsp(DET)を用い,マンニトールにロイシンを5%添加した吸入粉末剤を噴霧急速凍結乾燥法で調製した。ロイシン添加により吸入特性が大幅に改善され,さらにマウス肺内でのルシフェラーゼ活性は,PAsp(DET)製剤でキトサン製剤の50倍以上となった。以上,ベクターと添加剤の選択により,遺伝子吸入粉末剤の遺伝子発現効率が大きく改善できることが示された。

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