2017 年 17 巻 2 号 p. 63-75
不可逆的に化学反応や物質移動が進行する非平衡状態におかれたコロイドが示す運動性は,熱運動とは異なり時空間的に秩序ある動きになり得る。この動きは,集団によるパターン化,能動輸送性,刺激感知性,化学走性などの生物的な特徴を示すことがあるが,生物とは異なり,単純な物質系で構成されている。 このような運動系は本質的に開放系であり,運動を生み出す過程は外界との物質移動を行う表界面で進んでいる。したがって,比表面積の大きいコロイド系が研究対象となる。本総説では,溶液中の触媒粒子,油水分散系,油水界面,両親媒性分子集合体を対象とした筆者らの研究を中心に,一見ランダムな動きの秩序運動への変換,運動体の集団がつくる動的パターン,運動体を利用した物質の能動輸送による分離濃縮,溶存カチオン種による運動形態の変化,両親媒性分子集合体が示す化学走性的ダイナミクスについて紹介する。