オレオサイエンス
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17 巻, 2 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
特集総説論文
  • 丸山 厚, 嶋田 直彦
    2017 年 17 巻 2 号 p. 41-48
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/08/05
    ジャーナル フリー

    生体高分子は,特定の高次構造(Nativeな構造)に折りたたまれ(フォールディング),場合によっては多分子組織化(アッセンブリング)し,多岐な生体機能を発現する。我々は,生体高分子の構造形成を制御することを目的に,イオン電荷を持つ主鎖と親水性の側鎖からなるくし型共重合体を設計した。共重合体は,反対電荷を持つ生体高分子と可溶性の高分子電解質複合体(IPEC)形成を介し,生体高分子間の静電反発を抑制し,その構造形成を促した。たとえば核酸の二重鎖,三重鎖および四重鎖形成速度を共重合体は顕著に高めた。共重合体のこのような効果は,分子ビーコンや核酸酵素などの機能性核酸の活性を高めるのに有用であった。共重合体は,電荷を持つペプチドのフォールディングも促しその機能を向上させた。脂質膜破壊活性を持つE5ペプチドの活性な構造への転移を促し,その膜破壊活性を顕著に高めることがわかった。イオン性くし型共重合体を基盤としたソフトで可溶性のIPEC形成は,生体高分子の活用を広げると期待される。

  • 鈴木 隆平, Arif Md. Rashedul Kabir, 佐田 和己, 角五 彰
    2017 年 17 巻 2 号 p. 49-53
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/08/05
    ジャーナル フリー

    微小管/キネシン系に代表される生体分子モーターはアデノシン三リン酸(ATP)を加水分解することにより得られるエネルギーを使って運動するタンパク質である。これらの生体分子モーターはナノメートルサイズでありながら,高いエネルギー変換効率,高い比出力を有する。本項では生体分子モーターを動力源とした生体分子ロボットの開発を目的とした研究を紹介する。

  • 乾 滉平, 松井 秀介, 鈴木 大介
    2017 年 17 巻 2 号 p. 55-62
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/08/05
    ジャーナル フリー

    高分子ヒドロゲル微粒子は温度やpHなどの外部刺激に対して応答し,その物理化学的性質が可逆的に変化する『刺激応答性』を有する。また,水溶液中で膨潤し,ブラウン運動をしており,分散/凝集といったコロイド的性質も併せ持つ。筆者らは,これまで「高分子ゲル微粒子の次元制御とマイクロ空間場における機能制御」というコンセプトのもと研究を続けており,その中には,非平衡系の中での自己組織化を活用した機能制御を含んでいる。特に,温度応答性の高分子であるpoly(N-isopropyl acrylamide)(pNIPAm)から成るゲル微粒子は,その希薄分散液の乾燥後,間隔を空けて配列し,単層の薄膜が自発的に形成される。筆者らはこの現象に注目し,その乾燥過程を追跡する事で,ゲル微粒子の自発的な構造形成過程を明らかにしてきた。更に,『液滴の乾燥』といった極めてシンプルな系とは異なり,このpNIPAmゲル微粒子と化学振動反応(ベローゾフ・ジャボチンスキー(BZ)反応)のカップリングを試み,微粒子に時間周期構造の付与を行う事で,周期的に体積や粒子間相互作用を変化させる新奇ゲル微粒子(自律駆動ゲル微粒子)の開発に成功している。本稿では,筆者らが検討している『ゲル微粒子の自己組織化』研究について,上述した自律駆動ゲル微粒子の話題を中心に紹介し,その発展について述べる。

  • 塩井 章久, 山本 大吾, 沖田(名和) 愛利香
    2017 年 17 巻 2 号 p. 63-75
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/08/05
    ジャーナル フリー

    不可逆的に化学反応や物質移動が進行する非平衡状態におかれたコロイドが示す運動性は,熱運動とは異なり時空間的に秩序ある動きになり得る。この動きは,集団によるパターン化,能動輸送性,刺激感知性,化学走性などの生物的な特徴を示すことがあるが,生物とは異なり,単純な物質系で構成されている。 このような運動系は本質的に開放系であり,運動を生み出す過程は外界との物質移動を行う表界面で進んでいる。したがって,比表面積の大きいコロイド系が研究対象となる。本総説では,溶液中の触媒粒子,油水分散系,油水界面,両親媒性分子集合体を対象とした筆者らの研究を中心に,一見ランダムな動きの秩序運動への変換,運動体の集団がつくる動的パターン,運動体を利用した物質の能動輸送による分離濃縮,溶存カチオン種による運動形態の変化,両親媒性分子集合体が示す化学走性的ダイナミクスについて紹介する。

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