2017 年 17 巻 7 号 p. 313-319
バイオディーゼル燃料を製造する際に副生するグリセリンの有効利用法の開発が望まれている。酸化鉄を主成分とする触媒を用いたグリセリン転換反応では,アリルアルコールとプロピレンが生成する反応経路Ⅰとアセトール,カルボン酸とケトン類が主に生成する反応経路Ⅱに従って反応が進行する。BDF 製造時に副生する粗製グリセリンに対し,同触媒反応系を適用すると,プロピレンとケトン類を生成させることに成功した。さらに,酸化鉄へのカリウムの担持,および反応系へのギ酸の併給は,グリセリンからのアリルアルコール収率向上(約40%)に有効であることを見出した。触媒の結晶性と酸特性を評価したところ、反応系中のギ酸由来水素により触媒の結晶性はヘマタイト構造(α-Fe2O3)からマグネタイト構造(Fe3O4)へ還元されること、および触媒上にブレンステッド酸点が新たに形成されることが明らかとなった。 したがって、マグネタイト構造の触媒上に新たに形成した酸点により、グリセリンからのアリルアルコール生成が促進したと考えられる。