オレオサイエンス
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特集総説論文
老化制御シグナルを標的としたアンチエイジング物質開発の可能性
王 梓大畑 佳久千葉 卓哉
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2018 年 18 巻 2 号 p. 55-60

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抄録

老化や寿命は,環境などに影響される確率的な要素が大きいと考えられていたため,遺伝学や分子生物学の研究対象として扱われるようになるのが発生学などと比べて遅れていた。しかし近年,モデル生物や高等生物をもちいた寿命研究が精力的に行われ,いくつかの老化制御シグナルが複数の生物種に共通して存在していることが明らかとなってきた。それらはインスリン/インスリン様成長因子-1(insulin/insulin-like growth factor-1: IGF-1),sirtuin 1(SIRT1),mammalian target of rapamycin(mTOR)経路などである。さらに,これらの細胞内シグナル伝達経路を標的として,実験動物の寿命を延長させる物質がいくつか報告されている。それらの物質は,カロリー制限による寿命延長効果を模倣する物質としても知られている。米国では,そのような物質の一つをもちいて抗老化薬としての大規模なヒト臨床試験が行われており,数年後にはその結果が報告されることになっている。本稿では,上記のこれまでに明らかになっている老化制御シグナル,およびその制御物質について概説するとともに,植物由来の機能性成分の中で老化制御因子として注目されている物質について紹介する。

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© 2018 公益社団法人 日本油化学会
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