2019 年 19 巻 4 号 p. 139-144
我々は生命を維持するために食事によるエネルギー摂取が非常に重要である。しかしながら,近年,食の欧米化に伴い,過度な食事や高脂肪・高炭水化物食(高エネルギー食)による過剰エネルギー摂取が,生活習慣病などのエネルギー代謝異常疾患を引き起こすことが問題となっている。また,近年の研究で,腸内細菌叢がエネルギー代謝異常疾患と密接に関与することが科学的根拠に基づき明らかにされた。さらに,その分子実体の一つとして腸内細菌代謝物に注目が集まり,宿主のエネルギー代謝や免疫機能だけに留まらず,各種末梢臓器を介した恒常性維持に密接に影響することが科学的根拠に基づいて明らかにされ始めた。そこで,本稿では,食事と腸内細菌の関与,及びその代謝物による宿主生体恒常性維持に及ぼす影響について,我々の知見と,最近の研究状況とともに概説する。