オレオサイエンス
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特集総説論文
腸内細菌が産生する食事脂質代謝物の機能解析と応用
岸野 重信米島 靖記小川 順
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2019 年 19 巻 4 号 p. 133-138

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抄録

食事より摂取した脂質は宿主体内で代謝され,エネルギー源や生体膜分子として利用されるほか,シグナル伝達物質としての役割も担う。また,脂質は宿主と共生関係にある腸内細菌によっても代謝され,その代謝で特徴的に生じる脂肪酸が宿主の脂肪酸組成に影響を与えていることが明らかとなり,一般的に摂取量の多い脂肪酸であるリノール酸などの食事脂質に由来する脂肪酸の腸内細菌代謝物に様々な生理活性が報告されている。このように,これまで栄養素として考えられてきた脂肪酸が宿主及び腸内細菌によって代謝されることで様々な生理活性を発揮する可能性が示唆されており,これら脂肪酸を利用した医薬品及び機能性食品の開発や腸管内で機能性脂肪酸を産生するプロバイオティクスの開発が期待される。我々は,腸内細菌が産生する脂肪酸の内,リノール酸から代謝される初期代謝産物10-hydroxy-cis-12-octadecenoic acid(以下HYA)について,食品向けの実用化開発を現在実施しており,本稿ではHYAの機能と実用化に向けた取り組みについて紹介する。

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© 2019 公益社団法人 日本油化学会
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