オレオサイエンス
Online ISSN : 2187-3461
Print ISSN : 1345-8949
ISSN-L : 1345-8949
19 巻, 4 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
特集総説論文
  • 岸野 重信, 米島 靖記, 小川 順
    2019 年 19 巻 4 号 p. 133-138
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/25
    ジャーナル フリー

    食事より摂取した脂質は宿主体内で代謝され,エネルギー源や生体膜分子として利用されるほか,シグナル伝達物質としての役割も担う。また,脂質は宿主と共生関係にある腸内細菌によっても代謝され,その代謝で特徴的に生じる脂肪酸が宿主の脂肪酸組成に影響を与えていることが明らかとなり,一般的に摂取量の多い脂肪酸であるリノール酸などの食事脂質に由来する脂肪酸の腸内細菌代謝物に様々な生理活性が報告されている。このように,これまで栄養素として考えられてきた脂肪酸が宿主及び腸内細菌によって代謝されることで様々な生理活性を発揮する可能性が示唆されており,これら脂肪酸を利用した医薬品及び機能性食品の開発や腸管内で機能性脂肪酸を産生するプロバイオティクスの開発が期待される。我々は,腸内細菌が産生する脂肪酸の内,リノール酸から代謝される初期代謝産物10-hydroxy-cis-12-octadecenoic acid(以下HYA)について,食品向けの実用化開発を現在実施しており,本稿ではHYAの機能と実用化に向けた取り組みについて紹介する。

  • 向山 広美, 宮本 潤基
    2019 年 19 巻 4 号 p. 139-144
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/25
    ジャーナル フリー

    我々は生命を維持するために食事によるエネルギー摂取が非常に重要である。しかしながら,近年,食の欧米化に伴い,過度な食事や高脂肪・高炭水化物食(高エネルギー食)による過剰エネルギー摂取が,生活習慣病などのエネルギー代謝異常疾患を引き起こすことが問題となっている。また,近年の研究で,腸内細菌叢がエネルギー代謝異常疾患と密接に関与することが科学的根拠に基づき明らかにされた。さらに,その分子実体の一つとして腸内細菌代謝物に注目が集まり,宿主のエネルギー代謝や免疫機能だけに留まらず,各種末梢臓器を介した恒常性維持に密接に影響することが科学的根拠に基づいて明らかにされ始めた。そこで,本稿では,食事と腸内細菌の関与,及びその代謝物による宿主生体恒常性維持に及ぼす影響について,我々の知見と,最近の研究状況とともに概説する。

  • 後藤 剛, Kim Minji, 川原崎 聡子, 高橋 春弥, 河田 照雄
    2019 年 19 巻 4 号 p. 145-152
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/25
    ジャーナル フリー

    腸内細菌叢は宿主のエネルギー代謝調節において重要な役割を果たすことが明らかになりつつあるが,その詳細な分子機構は未解明な部分が多い。短鎖脂肪酸をはじめとする腸内細菌由来代謝産物による宿主代謝調節機構がその一翼を担っていると考えられる。褐色脂肪組織は低温下での体温維持に寄与する高い熱産生能を有する脂肪組織であり,その活性強度が成人の肥満度と逆相関することが明らかにされ,肥満や肥満に伴う代謝異常症の予防・改善の標的組織として注目されている。近年,腸内細菌叢と褐色脂肪組織機能の関連性が報告されつつあり,食餌由来の腸内細菌代謝産物を介した褐色脂肪組織機能調節機構の存在が示唆されている。本作用は腸内細菌叢による宿主エネルギー代謝調節機構の一端として寄与していることが推定される。本稿では,褐色脂肪組織機能および食餌由来腸内細菌代謝産物による褐色脂肪組織機能調節作用について概説したい。特に,近年同定された食餌由来不飽和脂肪酸由来の腸内細菌産生修飾脂肪酸の機能について,私達が行っている研究結果について中心に紹介する。

  • 雑賀 あずさ, 國澤 純
    2019 年 19 巻 4 号 p. 153-160
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/25
    ジャーナル フリー

    アラキドン酸に代表されるω6- 多価不飽和脂肪酸(PUFA)代謝物は炎症反応を誘導・助長する役割を担っている。一方,エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)に代表されるω3-PUFAは抗炎症作用を示すことが知られているが,その詳細な抗炎症作用誘導メカニズムについては長らく不明であった。近年,ω3-PUFA由来の脂質代謝産物の同定が進み,ω3-PUFAであるEPAやDHAから代謝されて生じる脂質メディエーター(レゾルビン,プロテクチン,マレシンなど)に強力な抗炎症・炎症収束作用が見いだされ,ω3-PUFA摂取による抗炎症作用の実効分子になっていることが明かになってきた。筆者らは最近,EPA代謝産物の1つである17,18-エポキシエイコサテトラエン酸(17,18-EpETE)を抗アレルギー性脂質メディエーターとして同定した。さらにその後の研究から17,18-EpETEはGタンパク質共役受容体(GPR)であるGPR40に作用し,好中球の遊走を抑制することで抗炎症性の脂質メディエーターとしても機能することも明らかにしている。また,ω3-PUFAは腸内細菌叢にも影響を与えることが知られるようになり,腸内細菌叢の変動を介する事でも宿主免疫制御作用を発揮することが示唆されている。そこで本稿では,脂質摂取により生じる脂質代謝産物の変化,または腸内細菌叢の変動に起因する疾患の制御について紹介する。

feedback
Top