2019 年 19 巻 5 号 p. 203-209
筆者らは,直接乳化法と膜透過法と名付けた膜乳化手法を利用し,様々なマルチプルエマルションの新たな製造技術を開発した。直接乳化法によって開発にたどり着いた肝臓がん治療用W/O/Wエマルション型動注製剤では,800例を超える臨床治療が行われ,良好な治療効果が得られている。一方,膜透過法を基礎に調製される肝疾患治療を目指した静注用ナノエマルション製剤からは,in vivoとin vitro研究の中から,細網内皮系回避や細胞ターゲッティングに関する興味あるいくつかの知見が得られた。以上,医薬品に向けたマルチプルエマルションの可能性が大きいことに言及する。