2019 年 19 巻 8 号 p. 315-322
甘味タンパク質の電子状態とその甘味度の関係を調べるために,最も甘いタンパク質の1つであるdes-pGluブラゼインと甘味が変化する6 種類の変異体について密度汎関数法に基づく全電子量子化学計算を行った。des-pGluブラゼインと甘味が増加する2つの変異体の静電ポテンシャルマップから,中性アミノ酸Tyr8およびTyr51を含む多数のアミノ酸残基が正に帯電し,特に2つの変異体では正電荷がタンパク質全体に広く分布していることがわかった。さらに,甘味が増加する変異体のHOMOもしくはLUMOには正に帯電している多くのアミノ酸残基が存在しているのに対し,無味となる変異体のHOMOやLUMOには存在しないことが判明した。今回の計算結果と甘味度に関する実験事実を比較・検討した結果,des pGluブラゼインにおいて正負に帯電しているアミノ酸残基が甘味の発現・増減に関与していると考えられる。また,本研究の結果は,甘味タンパク質の電子状態,すなわち帯電したアミノ酸残基,電荷分布およびHOMOとLUMOの特性が,甘味タンパク質と甘味受容体タンパク質T1R2/T1R3の相互作用において重要な役割を果たすことを示している。