オレオサイエンス
Online ISSN : 2187-3461
Print ISSN : 1345-8949
ISSN-L : 1345-8949
19 巻, 8 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
特集総説論文
  • 矢城 陽一朗, 木村 崇知, 亀澤 誠
    2019 年 19 巻 8 号 p. 315-322
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/25
    ジャーナル フリー

    甘味タンパク質の電子状態とその甘味度の関係を調べるために,最も甘いタンパク質の1つであるdes-pGluブラゼインと甘味が変化する6 種類の変異体について密度汎関数法に基づく全電子量子化学計算を行った。des-pGluブラゼインと甘味が増加する2つの変異体の静電ポテンシャルマップから,中性アミノ酸Tyr8およびTyr51を含む多数のアミノ酸残基が正に帯電し,特に2つの変異体では正電荷がタンパク質全体に広く分布していることがわかった。さらに,甘味が増加する変異体のHOMOもしくはLUMOには正に帯電している多くのアミノ酸残基が存在しているのに対し,無味となる変異体のHOMOやLUMOには存在しないことが判明した。今回の計算結果と甘味度に関する実験事実を比較・検討した結果,des pGluブラゼインにおいて正負に帯電しているアミノ酸残基が甘味の発現・増減に関与していると考えられる。また,本研究の結果は,甘味タンパク質の電子状態,すなわち帯電したアミノ酸残基,電荷分布およびHOMOとLUMOの特性が,甘味タンパク質と甘味受容体タンパク質T1R2/T1R3の相互作用において重要な役割を果たすことを示している。

  • 渡辺 広幸
    2019 年 19 巻 8 号 p. 323-329
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/25
    ジャーナル フリー

    かおりは数多くの香気成分から構成される。微量の使用によってでも香気全体の品質を高めることができる高い能力をもつ香料化合物が存在し,それらを活用することで優れたかおりをつくることが可能となる。

    今回そのような有用物質の開発例として,直鎖不飽和アルデヒド類である(E)-6-nonenal,(E)-6-octenal,(Z)-8-pentadecenal,(4Z,7Z)-4,7-tridecadienalについてと,また和柑橘のユズから見出した新規化合物である(6Z,8E,10E)-6,8,10-undecatrien-3-oneについての研究を紹介する。(E)-6-Nonenal,(E)-6-octenal,(Z)-8-pentadecenalは脂肪感や油脂感の増強効果があり,低脂肪加工食品向けのフレーバーとして有用であった。また(4Z,7Z)-4,7-tridecadienalは鰹節の香気再現には欠かせない成分であり,酸味抑制効果も併せ持つ有用物質であった。(6Z,8E,10E)-6,8,10-Undecatrien-3-oneはユズのかおりを他の柑橘類と差別化するうえで欠かせない重要成分であった。この化合物はさらに,炭酸感を増強する効果を併せ持つ興味深い機能性物質であることが判明した。

  • 重久 真季子, 岡本 好正
    2019 年 19 巻 8 号 p. 331-336
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/25
    ジャーナル フリー

    衣料用柔軟仕上げ剤の市場では,香りが残るタイプの市場拡大が顕著であり,それらは近年の日用品における香りブームを牽引してきた。いまや柔軟剤は,衣類を柔らかくする目的だけでなく,香りを楽しむものとして使用されており,若年層を中心に「好きな香りが長続きすること」が求められている。柔軟剤として好まれる香りは,爽やかな香り,華やかな香りであるが,それらの香調を構成する香料成分は,親水性および揮発性が高いものが多く,柔軟剤に配合しても,洗濯浴中ではすすぎ水に分配されるため吸着しにくく,衣類には残りにくい。このような課題を解決するため,吸着性および徐放性を向上させうる香料前駆体に着目し,柔軟剤への応用を検討した。この香料前駆体は,水分によって爽やかで華やかな香りを産生する特長を持つため,心地よい香りのゆらぎを感じさせる香りの新価値提案につながった。

feedback
Top