2019 年 19 巻 9 号 p. 373-378
色材の中で絵画を制作する目的に使われるものを特に「絵具」と言う。「絵具」は,着色剤(顔料)と展色剤の混合物であり,着色剤は,展色剤に溶けるものであってはならない。長い絵画の歴史の中でも,これら絵具の本質は変わっていない。絵画の制作は,画家個人の技法に委ねられており,感性の世界の中で,独自のマチエールが作り出される。絵具は,様々な助剤を用いることにより改良されてきたが,顔料の性能を最大限に引き出すことが,より良い絵具作りにつながると考えている。東京藝術大学油画技法材料研究室との協同研究の成果として油絵具「油一」を発表した。これは,顔料と油だけで練られていた時代のプリミティブな油絵具を,現代の高性能な生産技術を導入することにより,画家の感性に基づく現代の油絵具として完成させたものである。