オレオサイエンス
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総説
有機基質の劣化防止に対する新規物質及び新規技術の開発に関する研究
朝倉 浩一
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2002 年 2 巻 12 号 p. 767-773,731

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抄録
油脂, プラスティック, ゴム, 及び潤滑油等の有機基質は, 空気中の酸素によって酸化され劣化する。自動酸化と呼ばれるこの酸化劣化は, ペルオキシラジカルを連鎖担体としたラジカル連鎖反応で進行し, 基質を相当するヒドロペルオキシドへと変換する。本論文においては, これまでに本著者が開発を行なってきた, 有機基質の自動酸化を防止するための新規物質及び技術に関する研究を総説する。フェノール類はラジカル連鎖反応の禁止剤として機能し, 抗酸化性を示すことが知られているが, 全てのフェノール誘導体が抗酸化性に優れているわけではない。しかし, ほとんど抗酸化性を示さないフェノール誘導体であっても, それを重合しオリゴマー化させることで, 顕著な抗酸化性を示すようになることが明らかとなった。さらに, 生成されるオリゴマーの重合度を, 簡易且つ低コストで制御する方法を開発した。また, スルフィド結合を有するフェノール誘導体を数種合成したところ, そのいくつかは非常に強い抗酸化性を示すことが見い出された。尚, 合成されたフェノールオリゴマー類及びスルフィド結合を有するフェノール誘導体類は, 抗酸化性に加えて抗菌性をも併せ持つことが認められた。自動酸化で生成されたヒドロペルオキシドはラジカル分解してペルオキシラジカルを発生させるため, これを除去することによっても自動酸化を抑制することができる。酸化劣化した有機基質とシクロデキストリンの水溶液を混合させると, ヒドロペルオキシドはシクロデキストリンと選択的に包接化合物を形成するため, 効率的に除去できることが見い出された。
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© 2002 公益社団法人 日本油化学会
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