オレオサイエンス
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2 巻, 12 号
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総説
  • 菊川 清見
    2002 年 2 巻 12 号 p. 733-738,729
    発行日: 2002/12/01
    公開日: 2013/04/25
    ジャーナル フリー
    酸化ストレス、すなわち活性酸素種および金属イオンは生体内で無差別的に生体成分に傷害を与え、老化や種々の疾病を引き起こすと考えられている。本研究は、酸化ストレスが、生体内で脂質、タンパク質およびDNAに与える影響を分子レベルで解明したものであり、また酸化傷害タンパク質を除去する酵素について検討したものである。本稿では、酸化ストレスが引き起こす脂質過酸化反応、酸化ストレスによる細胞の老化機構、酸化ストレスの二次的防御システムとしてのOPH (Oxidized protein hydrolase) について、筆者らの研究についてまとめた。
  • 國枝 博信
    2002 年 2 巻 12 号 p. 739-744,729
    発行日: 2002/12/01
    公開日: 2013/04/25
    ジャーナル フリー
    国枝研究室で行われた, 界面活性剤水溶液, 逆ベシクル, マイクロエマルション, 高内相比乳化, 及びキュービック相をベースにしたマイクロエマルションと乳化の溶液物性, 相挙動に関して概説した。
  • 田嶋 和夫
    2002 年 2 巻 12 号 p. 745-756,730
    発行日: 2002/12/01
    公開日: 2013/04/25
    ジャーナル フリー
    この論文は両親媒性物質によって形成する次の3種類の自己組織体;すなわち単分子膜型自己組織体, 二分子膜型自己組織体および多重分子膜型自己組織体が示す界面化学的性質に関して記述している。
    単分子膜型自己組織体は界面活性剤が界面で自然に形成する飽和吸着膜である。界面の吸着は3H標識化合物を用いてラジオトレーサー法によって直接測定して調べた。界面活性剤の飽和吸着は起泡性や表面張力低下などの界面化学的現象に強く影響を与えることがわかった。
    二分子膜型自己組織体は水に分散したリン脂質二分子膜が自然に形成する新しいゲル相である。主にDMPC, NaDMPGおよびNH4DMPGのリン脂質について, 二分子膜の熟成温度や経時変化などの性質をDSC, XRDおよびゼーター電位の測定から詳細に調べた。その結果, リン脂質二分子膜は溶媒の水と十分に水和するとゲル化して新しい相 (ゲル2) に転移することを見出した。このゲル2相でヘキサデカンを乳化すると, エマルション表面は, リン脂質の単分子膜吸着ではなく, 液晶状の可溶化ゲル膜が付着して, いわゆる三相エマルション構造となり, 極めて安定化することがわかった。
    多重分子膜型自己組織体は, 水面上に展開した高分子の単分子膜がある表面圧以上で圧力緩和によって自然に形成する液晶状の膜である。用いた高分子は共重合反応によって合成された分子量分布の狭い特殊な芳香族ポリエーテル (APE) である。圧力緩和したAPE膜をシリコンウェハー基板上に転写すると, ある種のエピタキシャル現象を示した。水面上のAPE膜は特異な自己組織体を形成していることがわかった。
  • 鈴鴨 剛夫, 濱田 和彦, 吉原 博
    2002 年 2 巻 12 号 p. 757-766,730
    発行日: 2002/12/01
    公開日: 2013/04/25
    ジャーナル フリー
    バイオマスを原料とする有機合成反応開拓の一環として, 糖質から医薬, 農薬等の中間体として有用なフラン誘導体の実用的合成法について検討した。一般に糖類を酸触媒によってフラン誘導体に変換する反応は選択性に乏しく, 収率の低い反応が多い。筆者らは界面活性剤の特性を活用することによって, 再生産可能で入手容易な単糖 (異性化糖を含む), 二糖類から有用なフラン誘導体に高収率で変換する新規な反応方法を見出した。これら一連の研究によりピレスロイド系殺虫剤成分の実用的合成法の確立, 効率的な種々のフラン誘導体の合成ルート開発や生理活性新母核の発見へ展開することができた。
  • 朝倉 浩一
    2002 年 2 巻 12 号 p. 767-773,731
    発行日: 2002/12/01
    公開日: 2013/04/25
    ジャーナル フリー
    油脂, プラスティック, ゴム, 及び潤滑油等の有機基質は, 空気中の酸素によって酸化され劣化する。自動酸化と呼ばれるこの酸化劣化は, ペルオキシラジカルを連鎖担体としたラジカル連鎖反応で進行し, 基質を相当するヒドロペルオキシドへと変換する。本論文においては, これまでに本著者が開発を行なってきた, 有機基質の自動酸化を防止するための新規物質及び技術に関する研究を総説する。フェノール類はラジカル連鎖反応の禁止剤として機能し, 抗酸化性を示すことが知られているが, 全てのフェノール誘導体が抗酸化性に優れているわけではない。しかし, ほとんど抗酸化性を示さないフェノール誘導体であっても, それを重合しオリゴマー化させることで, 顕著な抗酸化性を示すようになることが明らかとなった。さらに, 生成されるオリゴマーの重合度を, 簡易且つ低コストで制御する方法を開発した。また, スルフィド結合を有するフェノール誘導体を数種合成したところ, そのいくつかは非常に強い抗酸化性を示すことが見い出された。尚, 合成されたフェノールオリゴマー類及びスルフィド結合を有するフェノール誘導体類は, 抗酸化性に加えて抗菌性をも併せ持つことが認められた。自動酸化で生成されたヒドロペルオキシドはラジカル分解してペルオキシラジカルを発生させるため, これを除去することによっても自動酸化を抑制することができる。酸化劣化した有機基質とシクロデキストリンの水溶液を混合させると, ヒドロペルオキシドはシクロデキストリンと選択的に包接化合物を形成するため, 効率的に除去できることが見い出された。
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