この論文は両親媒性物質によって形成する次の3種類の自己組織体;すなわち単分子膜型自己組織体, 二分子膜型自己組織体および多重分子膜型自己組織体が示す界面化学的性質に関して記述している。
単分子膜型自己組織体は界面活性剤が界面で自然に形成する飽和吸着膜である。界面の吸着は
3H標識化合物を用いてラジオトレーサー法によって直接測定して調べた。界面活性剤の飽和吸着は起泡性や表面張力低下などの界面化学的現象に強く影響を与えることがわかった。
二分子膜型自己組織体は水に分散したリン脂質二分子膜が自然に形成する新しいゲル相である。主にDMPC, NaDMPGおよびNH
4DMPGのリン脂質について, 二分子膜の熟成温度や経時変化などの性質をDSC, XRDおよびゼーター電位の測定から詳細に調べた。その結果, リン脂質二分子膜は溶媒の水と十分に水和するとゲル化して新しい相 (ゲル2) に転移することを見出した。このゲル2相でヘキサデカンを乳化すると, エマルション表面は, リン脂質の単分子膜吸着ではなく, 液晶状の可溶化ゲル膜が付着して, いわゆる三相エマルション構造となり, 極めて安定化することがわかった。
多重分子膜型自己組織体は, 水面上に展開した高分子の単分子膜がある表面圧以上で圧力緩和によって自然に形成する液晶状の膜である。用いた高分子は共重合反応によって合成された分子量分布の狭い特殊な芳香族ポリエーテル (APE) である。圧力緩和したAPE膜をシリコンウェハー基板上に転写すると, ある種のエピタキシャル現象を示した。水面上のAPE膜は特異な自己組織体を形成していることがわかった。
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