抄録
カロテノイドは植物由来の天然色素であるが, 食事由来の抗がん物質として期待されてきた。そこで, 1980年代に代表的なカロテノイドであるβ-カロテンを用いたヒト介入試験が各地で始まった。しかし, その多くはヒトでβ-カロテンが抗がん作用を発揮することを証明することはできず, 喫煙者においてはむしろ発がんを促進する結果が得られた。ただし, このことは食事から摂取するカロテノイドの有効性を否定するものではない。ヒトは食事からβ-カロテン以外にもリコペンやキサントフィル類等を摂取することから, β-カロテン以外のカロテノイドの抗がん作用にもっと注目すべきである。事実多くの動物実験ではこれらのカロテノイドが単独あるいは混合で強い抗腫瘍活性をもつことが報告されている。さらに, このような動物実験におけるカロテノイドの抗腫瘍作用の発現機構をカロテノイドの細胞への作用と吸収・代謝から裏付ける必要がある。最近, カロテノイドの細胞増殖抑制や細胞分化誘導作用に関する報告が出てきている。カロテノイドの酸化開裂反応及び酸化産物の細胞増殖への影響を解析した結果, キサントフィル類を含む様々な食品由来のカロテノイドのがん細胞への作用, 吸収について紹介する。