2020 年 20 巻 2 号 p. 53-60
近年,健康に対する意識の高まりから,機能性食品に注目が集まっている。我々は,薬食同源の観点から食品成分の安全性を確保した上で,その有効性を高めるためのDrug Delivery System研究を行っている。β-カロテンは,体内では強力な抗酸化作用やビタミンAの供給源など有用な生理活性を持つことが知られているが,水にほとんど溶けないため消化管吸収性が乏しく,効率的な機能性食品素材として利用することが難しい。我々は,独自の非晶質固体分散体作製技術を適用することでβ-カロテンの水溶性並びに消化管からの吸収性を大きく増大させることに成功している。有機溶媒を用いず簡便に作製することのできる我々の技術は,難水溶性化合物の機能性食品開発に適しており,実用面で価値が高いといえる。