2020 年 20 巻 5 号 p. 203-208
農業分野において,安全性に優れ,環境への負荷が低く,農作物の有害生物に対して高い効果を示す農薬が求められている。そのような農薬の効果を高める方法として,界面活性剤などで代表される農業用展着剤が利用されている。農業用展着剤の多くは,化学合成によって製造されているが,人畜毒性および環境毒性,環境中での分解性などで課題がある。一方,微生物由来の界面活性剤であるバイオサーファクタントは,安全性が高く,生分解性が速いことが知られている。そこで,数種類のバイオサーファクタントの農業用展着剤としての効果を殺菌剤への添加効果を指標に評価した。その結果,供試したバイオサーファクタントの中で,酵母由来のマンノシルエリスリトールリピッド(MEL)が最も高い効果を示すことを見出した。本稿では,MELの農業用展着剤としての可能性に関する知見を紹介する。