オレオサイエンス
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20 巻, 5 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
総説
  • 雜賀 あずさ
    2020 年20 巻5 号 p. 187-193
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/09
    ジャーナル フリー

    マンノシルエリスリトールリピッド(MEL)は糖型バイオサーファクタントのひとつであり,そのユニークで多彩な機能から,界面活性剤としての利用だけでなく,環境適合型の機能性バイオ化学品として注目を集めている。現在,MELは化粧品・日用品分野で実用化されているが,今後のさらなる用途拡大,また医薬,農業,食品等の新規分野への参入には,生産性の向上と構造・機能の拡充が大きな課題となっている。こうした課題に対して,近年,複数のMEL生産菌で全ゲノム解読や遺伝子組換え技術の開発が進められ,遺伝子組換えによるMEL生産菌の改良が可能となってきた。本稿では,MEL生産菌の遺伝子組換えに向けた基盤技術の構築について国内外の取り組みを概説した後,筆者らがこれまでに取り組んだMEL生産菌の改良による量産化や構造拡充の事例について紹介する。

  • 菅原 知宏, 山本 周平, 曽我部 敦
    2020 年20 巻5 号 p. 195-202
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/09
    ジャーナル フリー

    酵母Pseudozyma tsukubaensisが生産するマンノシルエリスリトールリピッド-B(MEL-B)は,糖脂質型バイオサーファクタントとして研究が進められてきた。一方,優れたラメラ形成能と皮膚保湿作用といった機能性に加え,特徴的な使用感を付与する点が高く評価され,化粧品への採用が広がってきている。それに伴って,製剤化に関する研究も進展しており,MEL-Bの特性を活かした処方例の報告が増えてきている。本稿では,MEL-Bの皮膚に対する効果とメカニズムに関する基礎研究から,化粧品処方や使用感評価といった応用研究まで,化粧品用途を目指した研究事例を紹介する。

  • 越山 竜行
    2020 年20 巻5 号 p. 203-208
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/09
    ジャーナル フリー

    農業分野において,安全性に優れ,環境への負荷が低く,農作物の有害生物に対して高い効果を示す農薬が求められている。そのような農薬の効果を高める方法として,界面活性剤などで代表される農業用展着剤が利用されている。農業用展着剤の多くは,化学合成によって製造されているが,人畜毒性および環境毒性,環境中での分解性などで課題がある。一方,微生物由来の界面活性剤であるバイオサーファクタントは,安全性が高く,生分解性が速いことが知られている。そこで,数種類のバイオサーファクタントの農業用展着剤としての効果を殺菌剤への添加効果を指標に評価した。その結果,供試したバイオサーファクタントの中で,酵母由来のマンノシルエリスリトールリピッド(MEL)が最も高い効果を示すことを見出した。本稿では,MELの農業用展着剤としての可能性に関する知見を紹介する。

  • 高橋 大介, 戸嶋 一敦
    2020 年20 巻5 号 p. 209-214
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/05/09
    ジャーナル フリー

    マンノシルエリスリトールリピッド(MEL)は,抗菌活性などの興味深い生物活性と優れた界面活性を有することから,近年注目を集めている。現在,MELは酵母培養法により,脂肪鎖長の不均一な混合物として大量供給されているが,脂肪鎖長が均一な化合物として単離・精製することは困難であり,詳細な構造-機能相関の研究が進んでいない。そのため,新たな高機能性バイオサーファクタントを創出するためにも,構造が明確かつ単一構造を有するMEL類縁体の合成的供給が強く求められている。そこで,筆者らは,マンノース2位及び3位の脂肪鎖長が異なる(5種類)MEL-A-D(4種類)の系統的な全合成を検討した。その結果,筆者らが最近開発した芳香族ボリン酸触媒を用いた立体選択的β-マンノシル化反応を駆使することで,目的とした計20種類のMELの全合成に初めて成功した。本総説では,MELの系統的全合成に加え,最近報告したグラム陽性菌に対する抗菌活性の結果を紹介する。

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