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特集総説論文
サステナブル時代の古くて新しいアニオン界面活性剤:バイオIOS
坂井 隆也
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2020 年 20 巻 9 号 p. 417-423

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抄録

世界の人口増加と経済の発展は,清潔で快適な生活の提供に貢献してきた洗浄剤の需供給バランスにも影響を与えると予測されており,現在の界面活性剤の使い方を継続していくと,近い将来,界面活性剤の不足や洗浄剤価格の高騰などにつながると考えられている。世界の人々の清潔な生活を持続可能にするため,(1)天然原料由来で,(2)高い水溶性と(3)高い界面活性を発現するサステナブル界面活性剤の開発が望まれてきた。特に(2)と(3)は,一般には両立しない特性であるため,サステナブル界面活性剤の実現は極めて難しい課題と認識されてきた。昨年,我々は,天然原料からアニオン界面活性剤である内部オレフィンスルホン酸塩(バイオIOS)の製造を実現し,衣料用洗剤の主基剤として実使用を開始した。バイオIOSは,上記の3要件を全て高いレベルで満たすだけでなく,従来水溶性の低下から界面活性剤の原料としては適切ではないと考えられてきたC16およびC18の余剰油脂原料からの製造が可能である。このように,バイオIOSは本格的なサステナブル界面活性剤として実用化に至った最初の例である。

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© 2020 公益社団法人 日本油化学会
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