オレオサイエンス
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20 巻, 9 号
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特集総説論文
  • 坂本 一民
    2020 年 20 巻 9 号 p. 409-415
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/08
    ジャーナル フリー

    ISO/TC91は「界面活性剤及び,一種類以上の界面活性剤(石鹸・洗剤の構成成分を含む場合もある)を含む混合物に関する標準化」を担うISOの技術委員会のひとつで,1958年設立以来これまでに83件の国際規格を制定し,現在3件のプロジェクトが規格制定プロセスに従って進行中の他,TC91の戦略的活動計画(Strategic Business Plan:SBP)の改定と長期戦略作成の準備作業,新規プロジェクトの検討が5つのワーキンググループ(WG)のもとで進められている。本稿ではTC91の活動概要を説明し,界面活性剤の定義に関するいくつかの資料を参考に,TC91における今後の取り組みを紹介した上で,将来の界面活性剤の研究開発を考える上での用語の標準化に関する国内審議委員会および日本油化学会規格試験法委員会傘下の界面試験法小委員会の対応状況について紹介する。

  • 坂井 隆也
    2020 年 20 巻 9 号 p. 417-423
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/08
    ジャーナル フリー

    世界の人口増加と経済の発展は,清潔で快適な生活の提供に貢献してきた洗浄剤の需供給バランスにも影響を与えると予測されており,現在の界面活性剤の使い方を継続していくと,近い将来,界面活性剤の不足や洗浄剤価格の高騰などにつながると考えられている。世界の人々の清潔な生活を持続可能にするため,(1)天然原料由来で,(2)高い水溶性と(3)高い界面活性を発現するサステナブル界面活性剤の開発が望まれてきた。特に(2)と(3)は,一般には両立しない特性であるため,サステナブル界面活性剤の実現は極めて難しい課題と認識されてきた。昨年,我々は,天然原料からアニオン界面活性剤である内部オレフィンスルホン酸塩(バイオIOS)の製造を実現し,衣料用洗剤の主基剤として実使用を開始した。バイオIOSは,上記の3要件を全て高いレベルで満たすだけでなく,従来水溶性の低下から界面活性剤の原料としては適切ではないと考えられてきたC16およびC18の余剰油脂原料からの製造が可能である。このように,バイオIOSは本格的なサステナブル界面活性剤として実用化に至った最初の例である。

  • 吉村 倫一, 矢田 詩歩
    2020 年 20 巻 9 号 p. 425-430
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/08
    ジャーナル フリー

    アミノ酸は生命の維持に不可欠であり,環境や人体に安全であるため,さまざまな機能性材料として利用されている。アミノ酸系界面活性剤はその機能性材料の一つであり,アミノ酸にアルキル鎖を導入することで得られる。これらのなかで最も代表的なN-アシルアミノ酸系界面活性剤は,泡立ちがよく,石けんよりも硬水に対する感受性や皮膚への刺激が低く,抗菌活性や生分解性に優れるなどの特長を有する。 そのため,N-アシルアミノ酸系界面活性剤は,化粧品やトイレタリー製品などに広く使用されている。本稿では,分子内にヒドロキシ基を有するN- アシル-N-(2-ヒドロキシエチル)-β-アラニン塩とヒドロキシ基をもたないN-ドデカノイル-N-メチル-β-アラニン塩の2種類のアミノ酸系界面活性剤の気/液界面における吸着挙動および水溶液中でのミセル特性について,ヒドロキシ基の有無の観点から紹介する。

  • 伊村 くらら
    2020 年 20 巻 9 号 p. 431-437
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/09/08
    ジャーナル フリー

    界面活性剤が形成する分子集合体は,可溶化や分散といった作用を通じて,ナノ物質の運搬および保持の用途に広く用いられてきた。近年では,界面活性剤に類する構造を持つ分子の自己集合によって得られる「低分子ゲル」が注目を集めており,これを用いたナノ物質の回収が報告されている。このようなゲル化剤として働く界面活性剤に,pHや温度,光といった外部刺激に対する応答作用を組み入れると,ナノ物質回収における機能が拡張される。そこで,界面活性剤ゲルを利用した新しいナノ物質回収法の一例として,pH応答性を示す界面活性剤C16CAのゲル状分子集合体を用いた抽出分離に関する研究を紹介する。両イオン性を示すC16CAが等電点付近で形成するゲル状分子集合体は,貴金属ナノ粒子および有機色素分子を効果的に抽出する。貴金属ナノ粒子に対しては,粒子表面でC16CAによる保護膜が形成され,さらにこれがゲル状分子集合体と複合することで高効率かつ高安定なゲル抽出がもたらされる。有機色素分子の抽出においては,pHに応答したゾル-ゲル転移を経由することで,ゲル状分子集合体内部への分子包接がおこる。包接抽出による色素回収量が分子集合体の内部でのC16CAとの相互作用に強く依存し,分子識別がもたらされることについても述べる。

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