2021 年 21 巻 1 号 p. 13-23
“持続可能な社会”をキーワードにあらゆる分野で産業の変革期を迎えつつある昨今,動植物に由来するバイオマスの利活用は世界的に重要な課題に挙げられる。中でも「木質資源」は地球上で最大の賦存量を誇るバイオマスであり,最も重要なターゲットのひとつである。本研究では,木質由来の両親媒性分子である「リグニンスルホン酸」に着目し,分子内のアニオン性官能基を介してカチオン性の高分子と複合化することで,成形可能かつ柔軟な複合材料(イオン複合体)の開発に成功した。また,本イオン複合体は材料内部に多数のイオン結合を有しており,イオン性の構造に由来する湿度応答性や自己修復能,接着能などの多様な機能を示すことを明らかにした。