2021 年 21 巻 10 号 p. 403-408
プロセスシミュレーションは,各単位操作から成るプロセスの最適条件を明らかする,あるいは個々のプロセスを理論的に検証することができる。著者は,シミュレーションを通して,リグニンから1,3-ブタジエン(1,3-BD)を合成するプロセスを開発してきた。マスバランスおよびエネルギーバランスを基に計算した収支(balance of payment;BP)をプロセスの経済性指標として用いた。これは,単位重量のリグニンを処理した場合の収入を表す。プロセスシミュレーションにより,提案する3つのプロセスのうち,ジメチルエーテル(DME)を経由するプロセスが最も高い収支を示すことを明らかにした。望ましい1,3-BD合成プロセスは,リグニンガス化,DME合成,n-ブテン合成,および異性化/脱水素から構成される。リグニンガス化発電を競合プロセスとみなし,収支を基に1,3-BD合成プロセスの改良を図った。シミュレーションを通して,DMEからのn-ブテン収率向上が技術的課題であり,競争的な経済性を持つためのn-ブテン合成用触媒の性能を明らかにした。得られた知見は,実験検証の有効な指針となっている。プロセスシミュレーションと実験検証は,バイオマス変換プロセスの実用化を加速する上で,補完的な役割を持つ。