オレオサイエンス
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特集総説論文
概日リズム異常と代謝性疾患
榛葉 繁紀
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2021 年 21 巻 4 号 p. 129-134

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抄録

近年の生活習慣病患者,例えば糖尿病患者の特徴として肥満者(BMI 25以上)の増加が挙げられる。肥満ならびに生活習慣病患者数の急増の原因は多種多様であり,脂肪性食品によるエネルギー摂取,交通手段の発達による運動不足,過度のストレスなどがよく知られている。興味深いことに糖尿病患者数の推移と夜11時における就寝者数との間に負の相関があり,夜型生活への移行も生活習慣病発症の一因であると考えられる。この生活時間帯のシフトは生体機能の概日リズムに対して強い影響を与えると予測できる。生体機能の概日リズムは進化の過程において保存されてきた機構であり,いわゆる“体内時計(時計遺伝子)”により精密に制御されている。疾病の発症に好発時間があることは古くから記されてきたが,最近になり時計遺伝子の生活習慣病,特にメタボリックシンドロームに代表される代謝性疾患発症への関与を示唆する報告が相次いでなされた。本文では概日リズム異常と代謝性疾患との関係を概日リズム形成の構成因子である時計遺伝子の観点から考察してみたい。

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