2021 年 21 巻 4 号 p. 121-127
健康の維持増進を目的とした従来の栄養学は,食品の栄養成分に焦点を当てた,食事の質と量に関する研究が中心であった。一方,食物の消化,吸収,代謝機能には日内リズム(サーカディアンリズム)が存在し,睡眠覚醒リズムや体温のリズムなどとともに,体内時計によって制御されている。従って,これらのサーカディアンリズムの乱れは,睡眠障害や生活習慣病などの様々な疾患を引き起こすことが知られている。最近になって,時間栄養学という研究分野が注目されている。時間栄養学とは,食品の機能性を利用した睡眠の改善や,生体リズムを利用した食リズムの改善などによって健康機能の向上を目指す学問のことである。本稿では,時間制限摂食による糖尿病や肥満症などの生活習慣病の改善効果について最近の知見を紹介する。