オレオサイエンス
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21 巻, 4 号
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特集総説論文
  • 大石 勝隆
    2021 年 21 巻 4 号 p. 121-127
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/06
    ジャーナル フリー

    健康の維持増進を目的とした従来の栄養学は,食品の栄養成分に焦点を当てた,食事の質と量に関する研究が中心であった。一方,食物の消化,吸収,代謝機能には日内リズム(サーカディアンリズム)が存在し,睡眠覚醒リズムや体温のリズムなどとともに,体内時計によって制御されている。従って,これらのサーカディアンリズムの乱れは,睡眠障害や生活習慣病などの様々な疾患を引き起こすことが知られている。最近になって,時間栄養学という研究分野が注目されている。時間栄養学とは,食品の機能性を利用した睡眠の改善や,生体リズムを利用した食リズムの改善などによって健康機能の向上を目指す学問のことである。本稿では,時間制限摂食による糖尿病や肥満症などの生活習慣病の改善効果について最近の知見を紹介する。

  • 榛葉 繁紀
    2021 年 21 巻 4 号 p. 129-134
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/06
    ジャーナル フリー

    近年の生活習慣病患者,例えば糖尿病患者の特徴として肥満者(BMI 25以上)の増加が挙げられる。肥満ならびに生活習慣病患者数の急増の原因は多種多様であり,脂肪性食品によるエネルギー摂取,交通手段の発達による運動不足,過度のストレスなどがよく知られている。興味深いことに糖尿病患者数の推移と夜11時における就寝者数との間に負の相関があり,夜型生活への移行も生活習慣病発症の一因であると考えられる。この生活時間帯のシフトは生体機能の概日リズムに対して強い影響を与えると予測できる。生体機能の概日リズムは進化の過程において保存されてきた機構であり,いわゆる“体内時計(時計遺伝子)”により精密に制御されている。疾病の発症に好発時間があることは古くから記されてきたが,最近になり時計遺伝子の生活習慣病,特にメタボリックシンドロームに代表される代謝性疾患発症への関与を示唆する報告が相次いでなされた。本文では概日リズム異常と代謝性疾患との関係を概日リズム形成の構成因子である時計遺伝子の観点から考察してみたい。

  • 辰巳 佐和子, 桑原 頌治, 瀬川 博子, 宮本 賢一
    2021 年 21 巻 4 号 p. 135-140
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/06
    ジャーナル フリー

    血中リン濃度は,主に腸管吸収,骨代謝(骨形成・吸収),腎臓における排泄と再吸収,肝臓,筋肉などの軟組織への組織移行により維持される。血中リン濃度は日内リズムを形成し,その形成機序は早朝空腹時のリン濃度を規定する重要な要因と考えられている。

    慢性腎臓病(CKD)では非常に早期よりリン代謝異常が生じている。CKDや維持透析患者の死亡リスクは,早朝空腹時の血中リン濃度と正の相関を示すことが知られている。

    最近,Nampt(nicotinamide phosphoribosyl transferase)/NAD(nicotinamide adenine dinucleotide)系が,ナトリウム依存性リン輸送体であるNaPi-IIa(Npt2a),NaPi-IIc(Npt2c),NaPi-IIb(Npt2b)の発現量を調節することで,血中リン濃度の日内リズム形成に関わることが明らかにされた。実際に,Namptヘテロ欠損マウスでは,血中リン濃度の日内リズムは消失する。また肝臓特異的Nampt欠損マウスでは,異常な日内リズム形成を示すことから,Nampt/NAD系がリンの組織移行にも関与する可能性が示唆されている。血中リン濃度の日内リズム形成のさらなる理解は,CKDや維持透析患者のリン管理において重要である。

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