オレオサイエンス
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特集総説論文
光刺激に応答する分子集合体の構築とその応用
赤松 允顕酒井 健一酒井 秀樹
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2021 年 21 巻 6 号 p. 227-234

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抄録

界面活性剤が形成する分子集合体の構造を光刺激により変化させれば,内包した物質の放出制御が可能となり,薬物や有効成分の送達システムが構築できる。本総説では,これまでに筆者らが開発した光応答性界面活性剤について紹介する。アゾベンゼン修飾カチオン性界面活性剤は,紫外光および可視光照射にともなうtrans-cis異性化により臨界ミセル濃度が大きく変化した。桂皮酸修飾光分解性界面活性剤は,紫外光照射にともない界面物性が変化し,さらに紐状ミセル構造の変化に由来した水溶液粘度や微粒子分散性の光制御に成功した。オンデマンドな界面物性制御を可能にするため,光応答性界面活性剤の光応答スピードの高速化を検討した。紫外光照射にともないロフィンダイマーから生成するロフィルラジカルの再結合反応は,ミセル内部の閉鎖空間内で高速化することが分かった。両親媒性ロフィンダイマーを用いることで,その水溶液の表面張力を紫外光照射により数スケールで制御することができた。in situ小角中性子散乱 (SANS)を用いた解析の結果,両親媒性ロフィンダイマーは楕円体ミセルを形成し,紫外光照射ON-OFFにともない伸張・収縮を高速で繰り返すことが分かった。さらに,このミセル水溶液を用いることで,可溶化されたモデル薬物を光照射により高速で放出制御できた。

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