2022 年 22 巻 2 号 p. 71-76
放射光は材料工学,生命科学などの分野で主に利用されてきたが,現在食品や日用品の分野においても利用が促進されている。そこで,本稿では食用油脂の主成分であるトリアシルグリセロールの結晶に着目し,大型放射光施設にてその結晶化や融解をリアルタイムで捉えた検討を紹介する。現在,我々はトランス脂肪酸や飽和脂肪酸を多く含む油脂の健康への影響から,その代替としてオレイン酸を多く含むにもかかわらず常温で固体となる油脂の分子間化合物に着目している。その工業的な利用を目的として,放射光X線回折測定により製造工程を想定した急冷条件下での結晶化挙動を観察した。その結果,分子間化合物を効率的に結晶化させる条件やその形成過程が明らかになった。加えて,食用油脂の結晶構造解析に関して放射光を利用したその他の事例も紹介する。