オレオサイエンス
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22 巻, 2 号
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総説
  • 原田 昌彦, 高田 昌樹, 村松 淳司
    2022 年 22 巻 2 号 p. 55-60
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/02/05
    ジャーナル フリー

    東北大学キャンパス内に,2024年度の共用開始を目指して,次世代放射光施設が建設されています。既に基本建屋はほぼ完成し,加速器の設置が始まっています。食品,農学関係で用途の多い軟X線領域でSPring-8を100倍ともいわれる輝度のX線を利用できることが最大の特長です。それに加え,大学や一般財団法人が放射光利用をサポートする「コアリション・システム」も既存放射光施設にはない特徴であり,これらが産官学連携や学術研究に大きく貢献することが期待されます。本稿では,このような次世代放射光施設の特徴と,主に食・農領域における利活用の可能性について概説します。

  • ~放射光測定技術が果たす役割~
    神谷 哲, 羽生 圭吾
    2022 年 22 巻 2 号 p. 61-70
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/02/05
    ジャーナル フリー

    粉体は輸送や保管コスト,ならびに保存性の観点から製品や原料の形態として広く利用されている。一方で,粉体は計量時に手間がかかり,周囲へ粉の付着や飛散,さらには溶解時に解け残りが発生するなどの課題がある。著者らは,粉ミルクの使用時の手間を軽減しつつ,輸送適性を有する形態として,粉ミルクの固形化(タブレット)製造プロセスを開発した。本稿では固形化粉ミルクを実現する際の鍵となる製造技術について紹介する。具体的には,高い溶解性と輸送適性を両立させるための「コア・シェル構造」を得るための2 つの重要な技術,「圧縮プロファイル制御による打錠技術」と「糖質のガラス化・結晶化制御による硬化技術」について説明する。これらの製造技術の確立とメカニズム解明は,放射光測定技術を利用して実現した。本稿を通して,放射光を使った食品の計測とその独自の現象解釈が商品の新しい価値を創出した事例を紹介する。

  • 仲西 賢剛
    2022 年 22 巻 2 号 p. 71-76
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/02/05
    ジャーナル フリー

    放射光は材料工学,生命科学などの分野で主に利用されてきたが,現在食品や日用品の分野においても利用が促進されている。そこで,本稿では食用油脂の主成分であるトリアシルグリセロールの結晶に着目し,大型放射光施設にてその結晶化や融解をリアルタイムで捉えた検討を紹介する。現在,我々はトランス脂肪酸や飽和脂肪酸を多く含む油脂の健康への影響から,その代替としてオレイン酸を多く含むにもかかわらず常温で固体となる油脂の分子間化合物に着目している。その工業的な利用を目的として,放射光X線回折測定により製造工程を想定した急冷条件下での結晶化挙動を観察した。その結果,分子間化合物を効率的に結晶化させる条件やその形成過程が明らかになった。加えて,食用油脂の結晶構造解析に関して放射光を利用したその他の事例も紹介する。

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