オレオサイエンス
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特集総説論文
ポリエーテル変性シリコーンのベシクル/ディスク構造転移を利用したO/W乳化
渡辺 啓
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2023 年 23 巻 1 号 p. 17-28

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抄録

乳化は化粧品,ハウスホールド製品などの分野における重要な技術である。乳化物は非平衡状態であるため調製プロセスによって生成物が異なり,調製後は時間とともに状態が変化する。さらに油の種類によって乳化特性(生成物の物性,経時での安定性)が異なることが経験的に知られている。このように乳化研究において制御しなければならない変数は多く,その結果として解釈が複雑になるため,工業的応用にあたっては経験則に頼らざるを得ない部分が多かった。本研究では乳化界面の吸着層としてラメラ液晶相が存在する乳化物を対象とし,ラメラ液晶から分離した過剰な溶媒相である水相と油相が形成するO/W乳化物の物性について3成分系の相平衡に基づき検討した。その結果,乳化剤であるポリエーテル変性シリコーンのベシクル(ラメラ液晶が小胞体を形成して溶媒中に分散した状態)を含む水相を油相とともに撹拌することで,均一なラメラ液晶による界面膜を有し,合一に対して安定性の良好な乳化物が得られることが明らかになった。乳化プロセスにおいて,ベシクルから均一な液晶界面膜へ構造転移する過程を凍結レプリカ電子顕微鏡観察像および精密な粒子径解析に基づく界面膜厚の計算などから明らかにした。本稿が化粧品,ハウスホールド製品,食品,医薬品,塗料などの分野の製品における様々な機能性の進化に繋がれば幸いである。

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© 2023 公益社団法人 日本油化学会
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