オレオサイエンス
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特集総説論文
泡沫分離による水溶液からの物質の除去
松岡 圭介
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2024 年 24 巻 7 号 p. 305-310

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抄録

泡沫分離は水溶液中に溶解した物質を界面活性剤とともに分離・除去できる方法である。装置を用いて溶液中へ多数の気泡を送り込むと,気泡界面に界面活性剤(両親媒性物質も含む)の吸着膜が形成する。その気泡は物質を吸着しながら界面に浮上し,泡沫となる。長い管内での泡沫の上昇中に,排水に伴う物質の濃縮が進み,水溶液中の物質を泡沫として分離する。その除去機構は界面活性剤と物質の気-液界面での吸着であり,静電相互作用に基づく場合が多い。金属イオンの除去に関しては,界面活性剤の親水基のサイズと金属イオンの結晶イオン半径に相関があることが分かった。泡沫分離系でのイオン性色素の除去の研究から,イオン性色素は,その反対の電荷をもつ界面活性剤を使用すると除去できる。一方,両性界面活性剤の場合は,アニオン/カチオン色素を両方除去できる。泡沫分離の欠点は,除去に時間を要することである。イオン性ポリマーを併用すると,除去速度に関して相乗効果が高い界面活性剤があることが判明した。一方で,界面活性剤の種類にともない,ポリマーの使用は除去速度を低下させる場合がある。最後に,脱細胞を目的とした臓器の洗浄に泡沫分離法を適用する研究を報告する。

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