2025 年 25 巻 2 号 p. 43-50
ベトナムの農村を中心に伝統的な染色について聞き取りを行った結果を紹介する。ベトナムではかつて身近な植物を用いて染色していたことがわかった。北部ドゥオンラム村ではクーナウを使用し,綿布の染色を再現した。クーナウで染める場合は布の表面を日光に晒し,表を濃く仕上げるため裏面が薄い色であるのが特徴である。また南部タンチャウでは工場でマックヌアの染色が行われている様子を調査した。この布は絹で,マックヌアを布の重量の2倍になるまで付着させ,最後の仕上げに表面を叩いて艶を出すため,なめし革のような質感となる。これらはいずれも染色時に加熱することなく,水中に植物をすりおろし,その液に布を浸漬しては天日に晒す操作を繰り返すことで,より濃く染める手法であった。また,黒色に仕上げるために泥を使用する。これらの布の特徴や染色堅牢度を検討した。