オレオサイエンス
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25 巻, 2 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
特集序言
特集総説論文
  • 下村 久美子
    2025 年 25 巻 2 号 p. 43-50
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/01
    ジャーナル フリー

    ベトナムの農村を中心に伝統的な染色について聞き取りを行った結果を紹介する。ベトナムではかつて身近な植物を用いて染色していたことがわかった。北部ドゥオンラム村ではクーナウを使用し,綿布の染色を再現した。クーナウで染める場合は布の表面を日光に晒し,表を濃く仕上げるため裏面が薄い色であるのが特徴である。また南部タンチャウでは工場でマックヌアの染色が行われている様子を調査した。この布は絹で,マックヌアを布の重量の2倍になるまで付着させ,最後の仕上げに表面を叩いて艶を出すため,なめし革のような質感となる。これらはいずれも染色時に加熱することなく,水中に植物をすりおろし,その液に布を浸漬しては天日に晒す操作を繰り返すことで,より濃く染める手法であった。また,黒色に仕上げるために泥を使用する。これらの布の特徴や染色堅牢度を検討した。

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  • 古濱 裕樹
    2025 年 25 巻 2 号 p. 51-57
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/01
    ジャーナル フリー

    論文要旨:藍の色彩のデータを示し,藍の色彩の特徴を論じた。藍で染められる青色の色相の範囲は広い。色の濃さによって色相が変化し,淡色は緑みを,濃色では赤みを帯びる。L:25~40のやや濃い色でh:270°の青色を呈する。藍の青色は彩度が低い。
    藍染の古布の分析では,インディゴのみで染められているものばかりではなかった。近代以前の日本の庶民の紺色は,藍と藍以外の色素が併用されることも珍しくなかった。ツヤインジゴなどインディゴとは分子構造が異なる合成染料も藍染めの一種として扱われることがあった。ツヤインジゴはインディゴよりも鮮やかな色が染まるが,二次微分スペクトルで区別が可能である。
    藍の建て染めと生葉染めの絹は全く同じ色彩が染まるわけではなかった。生葉染めは緑みの強い青色が特徴的であった。インディゴの構造異性体であるインジルビンなど赤色色素で染まる絹の色は温かみのある紫色や赤色であるが彩度は低かった。

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  • 青木 正明
    2025 年 25 巻 2 号 p. 59-65
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/02/01
    ジャーナル フリー

    本論文は,平安時代の宮廷で用いられていた高度な染色技術の解明を目的とした研究の現状を報告する。古代の染織品は,現代においてもその鮮やかな色彩を保っており,その技術は失われたと考えられている。特に,延喜式に記載された「韓紅」と「黄櫨染」の2つの染色について解説する。韓紅はベニバナを用いた鮮やかなピンク色である。ベニバナは先行研究が比較的多くある。それらと江戸時代の染色法を参考に古代の染色技術の探索はある程度進んでいる。しかし,小麦ふすまの役割や染色における温度の影響など,未解明な点も残されている。黄櫨染は,ハゼとスオウを用いた黄褐色であり,延喜式に記載されている大量のスオウの使用量や,染色方法など,多くの謎に包まれており,筆者もまだ実質的な研究発表ができていない。古代の染色技術は,未だ明らかにされていない点が多く残っている。今後,さらなる実験と文献調査を進めることで,古代の染師たちがどのようにこれらの美しい色彩を作り出したのか,その謎を解き明かしていきたい。

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