2025 年 25 巻 2 号 p. 51-57
論文要旨:藍の色彩のデータを示し,藍の色彩の特徴を論じた。藍で染められる青色の色相の範囲は広い。色の濃さによって色相が変化し,淡色は緑みを,濃色では赤みを帯びる。L*:25~40のやや濃い色でh:270°の青色を呈する。藍の青色は彩度が低い。
藍染の古布の分析では,インディゴのみで染められているものばかりではなかった。近代以前の日本の庶民の紺色は,藍と藍以外の色素が併用されることも珍しくなかった。ツヤインジゴなどインディゴとは分子構造が異なる合成染料も藍染めの一種として扱われることがあった。ツヤインジゴはインディゴよりも鮮やかな色が染まるが,二次微分スペクトルで区別が可能である。
藍の建て染めと生葉染めの絹は全く同じ色彩が染まるわけではなかった。生葉染めは緑みの強い青色が特徴的であった。インディゴの構造異性体であるインジルビンなど赤色色素で染まる絹の色は温かみのある紫色や赤色であるが彩度は低かった。