オレオサイエンス
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総合論文
低分子化合物による溶媒の増粘とゲル化
英 謙二
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2005 年 5 巻 5 号 p. 219-228

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抄録
溶媒に添加すると増粘現象を起こしたりゲル化したりする低分子化合物を紹介した。前者は増粘剤とよばれ, 後者はゲル化剤と呼ばれる。増粘現象やゲル化の原動力はともに水素結合や静電相互作用, ファンデルワールスカ, π-π相互作用などの非共有結合である。
昏たとえば, トリ3, 7-ジメチルオクチル1, 3, 5-ベンゼントリカルボキサミドはシクロヘキサンを増粘し, 30gL1の濃度では20℃で20,000cPになる。トリ3, 7一ジメチルオクチルcis-1, 3, 5-シクロヘキサントリカルボキサミドもまた四塩化炭素, シクロヘキサン, ベンゼン, ピリジンなどに対し増粘を惹き起こす。5-アミノイソフタル酸ジメチルから合成した1一オクタデシルアミノー3, 5一ビス (2一エチルヘキシルアミノカルボニル) ベンゼンはヘキサン, シクロヘキサン, 芳香族溶媒, メタクリル酸メチル, スチレン, 軽油などを増粘化する。特に15gL-1のトルエン溶液の粘度は20℃では38,500cPである。また, その粘度は温度上昇とともに劇的に低下する。
ゲル化剤としてアミノ酸誘導体, 環状ジペプチド, アミホープLL(R)誘導体, trans-1, 2-シクロヘキサンジァミン誘導体を紹介した。ゲル化剤によるゲル化はゲル化剤分子が水素結合や静電相互作用, ファンデルワールスカ, π-π相互作用などの非共有結合をとおして自己会合し高分子様の巨大会合体に成長し, 絡まって3次元網目構造を作るために起こる。一方, 増粘現象は3次元網目構造ではなく高分子様の超分子集合体を形成する。3次元網目構造を形成できないとき増粘剤としての性質が現れると考えられる。
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© 2005 公益社団法人 日本油化学会
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