抄録
抗菌性第四アンモニウム塩は1935年にDomagkにより発明されて以来, 殺菌剤として医薬品, 病院環境衛生および抗菌加工製品分野において世界中で広く使用されてきた。第四アンモニウム塩の最適化分子設計のためのリード化合物としてヨウ化N-アルキルピリジニウムを選択した。抗菌活性と化学構造の定量的構造活性相関には分子疎水性, 1Hと13Cのケミカルシフト, 酸解離定数および微生物表面疎水性をパラメーターとして解析した。この結果, 分子内に2個の第四アンモニウム塩残基を有し, 対称型の特徴的構造を持った新規薬剤第四アンモニウム塩の開発に成功した。このジェミニ型の第四アンモニウム塩は分子内に1個の第四アンモニウム塩残基を持ったモノ型よりも細菌, 黴および酵母に対して強い微生物破壊活性を持つ。さらに, この第四アンモニウム塩の抗菌活性は共存タンパク質, 環境pHおよび温度の影響を受けなかった。これらの結果より, このジェミニ型第四アンモニウム塩は薬剤耐性菌を生じさせない優れた性質を持つことを明確にした。