抄録
1987年, 林らにより報告された圧力の食品加工への応用は, 画期的な新規技術として注目されてきた。しかしながらこれら一連の研究の大部分はタンパク質の変性, 澱粉の加工, 殺菌技術に関するものであり, 油脂結晶に対する効果についてはほとんど検討されていなかった。油脂は加工食品のなかで重要な素材である。われわれは高圧が油脂結晶に及ぼす影響について検討するために, さまざまな圧力条件下で冷却曲線, 固体脂含量の測定を行った。その結果, 圧力により油脂の結晶化は促進され, 結晶量も増大することが明らかになった。また, ホイップ特性も改良されることが確認された。これらは圧力晶析により油脂結晶が微細で安定化されていることによるものと考えられる。さらに圧力晶析を応用したマーガリン製造設備により得られたマーガリンを用いることで, パン, 菓子製品の品質を大幅に向上させることが可能であることが明らかとなり, 本技術は新規なマーガリン製品開発のための有用な手段であると期待される。